フロントフォークのオーバーホール その4 / Front fork overhaul (4)

フロントフォークのオーバーホールシリーズ第4弾です。 

昨日の記事の最後に書きましたが、当初予定していた作業計画の変更をする事にしました。フォークを全分解し、各パーツをひとつずつチェックしながら清掃していると、あることに気が付いたのです。


そもそも今回のオーバーホールのきっかけは左側フォークからのオイル漏れです。はじめはうっすらとインナーチューブに油の輪っかができる程度だったんですね。

私はメンテナンスの一環として時々マイナスドライバーでダストシールをこじって浮かせて、オイルシールに付着した汚れを取り、スプレーやグリスでシールを潤滑していて、メンテナンス後しばらくはインナーチューブに潤滑剤の輪っかができるので、それをこまめに拭き取りながら走行していました。

オイル漏れ当初はその輪っかがオイルだとは思わず、潤滑剤を多くつけすぎたかな?と思っていたのです。ある日、それにしても何かがおかしい、と思い、シール部分を清掃した後、無潤滑で走行していたのですが、拭いても拭いても輪っかができる状態に陥ったのです。

この時に初めて、フロントフォークからオイルが漏れている事を認識しました。
その後長い間、走行後に輪っかを拭く事が日常化していたのですが、先日ついにオイルがドバッと吹き出したのです。 

オイル漏れの原因として疑ったのは、インナーチューブです。

まず、傷です。オイルシールと摺動する部分に傷がついて、シールを痛めたのではないか。

次に曲がりです。今から約2年前、赤信号で停車していたところ、脇見運転の軽自動車に追突されて転倒しています。
リア周りが大破したのでそれは修理しましたが、フロント周りはそのままです。追突と転倒の衝撃でインナーチューブが曲がっていたのかもしれません。

それとチューブ表面の磨耗ですね。
XL1200Lの「L」は「Low model」のLなのですが、XLのスタンダードな長さにするために、走行距離6万kmか7万kmの時点でインナーチューブを換えています。

これもいろいろあって、またいつか記事にしたいのですが、とにかく一度インナーチューブを換えています。換えたと言ってもそこからまた7万kmか8万km 走っているので、チューブのメッキ表面が磨耗して、オイルシールとの間に隙間ができている事も考えられます。 

あとは、オイルシールの問題です。ショップのメカニックの方から1点指摘された事があって、メンテナンス時に使用する潤滑剤がシールに悪さをしていて、潤滑材の溶剤でシールが膨潤している可能性がある、とゆうものです。 

いずれにしても、このままほっといて治るものでもないので、オーバーホールをすることにしたのですが、いざ分解して点検したところ、インナーチューブのシールとの摺動面に傷は無く、インナーチューブ同士くっつけて回して曲がりをチェックしても定規を当ててみても顕著な曲がりも無く、表面の磨耗を目視と手触りで確認するも、無く、オイルシールをめっちゃ近くでよーく観察しながら指で触って小さな傷を探しても、無く、膨潤している様子も、何も無いのです。

これは明らかにあかんやろ、とゆうのを期待していたのですが、いい意味で?期待はずれの結果に終わりました。
悪い意味ではオイル漏れのはっきりとした原因が解らないので、不安というか気持ちが悪いのですが、切り替えます。

今回は、消耗品の交換はしません。 
これが計画の変更点です。ダストシール、リテイニングリング、オイルシール、スペーサー、アッパーブッシング、ロアブッシング、更にフォークドレンボルトとワッシャー、アレンボルトとワッシャー、全て新品に交換する予定でしたが、点検して清掃したところ、まだ使えそうなので、再使用する事にしました。バイクショップではありえないですよね。あ、フォークオイルは新しいものを使います。

オイルシールです。ネオファクトリー製でした。リップ部には傷一つなく、弾性も失われていません。
若干サビが付着しています。これがオイル漏れの原因かもしれません。








これで洗浄します。CCI メタルラバーです。ブレーキキャリパーのメンテナンスによく使われていますね。摺動部分のOリングなどへの悪影響が極小の潤滑剤ですが、非常に高い洗浄力も持ち合わせています。


CCI M-1 メタルラバーMR20 エアゾール








汚れが溜まりやすい溝部分や凹部分に少量吹き付けます。するとプクプクと気泡が発生するのですが、これがサビを見事に浮かせてくれます。

見ていると面白いのですが、浮いたサビを丸めて閉じ込めているようで、何か、動いていて、生きているみたいです。

ひと缶にずっしりと入っていて量が多いので、何かあった時に贅沢に使えます。





ロアブッシングです。左が古く、右が新品です。




内側のインナーチューブとの接触部分が剥げていますが、外側のアウターチューブとの摺動部分のコーティングは、まだ生きています。 思っていたよりも良い状態です。




アッパーブッシングです。同じく右が新品です。




外側はアウターチューブに打ち込まれて接触しているだけなので、大きな傷や変形がなければ神経質にならなくても良いと思います。
重要なのは内側で、インナーチューブの外周と常に摺動している為、小さな傷でもインナーチューブを痛める可能性があります。傷もなくコーティングも綺麗で、すべすべです。




アレンボルトのワッシャーです。銅ワッシャーで、締めこまれる時に変形する事でボルトとアウターチューブの座面に密着し、オイルが漏れないようにシールします。
大きく変形していなかったので、今回は清掃しただけで、裏返しにして使います。




アレンボルトのネジ山を綺麗にしてから、スレッドシーラントを塗ります。漏れ止めですね。


PERMATEX スレッドシーラント 液体 シール材 漏れ 流入 防止 あらゆるねじ山に 非凝固タイプ 取り外し可能!! 許容温度 -54~204℃ 28g




インナーチューブにロアブッシングをセットします。ブッシングの内側にシリコングリスを塗って、指でブッシングの口を広げながら挿入します。ブッシングの外側には何も塗りません。おそらく組み込んでフォークオイルを入れれば、オイルが回るであろう事と、極力オイルに余分な成分を混ぜ込まない様にしたいからです。


信越 シリコーングリース




写真が無いとちょっと分かりにくいのですが、インナーチューブにダンパーチューブを入れ(ダンパーチューブはスライダースプリングをセットした状態です、分かりにくければ昨日の記事の写真を参考にして下さい)、ダンパーチューブ先端をインナーチューブの下側から出します。

インナーチューブから突き出したダンパーチューブの先端にロアーストップをセットして、ロアーストップがずれないように注意しながらアウターチューブに挿入していきます。横向きに持って作業するとやりやすいですね。

裏側にあたるアウターチューブの底からアレンボルトを入れていきます。
アウターチューブの外側の底から見ると、アレンボルトはアウターチューブの穴を通り、次にロアーストップの穴を通って、ダンパーチューブ先端のメネジに入ります。

ボルトを締めていくと、ボルトから見て、銅ワッシャー、アウターチューブ、ロアーストップ、ダンパーチューブが繋がっていきます。
このまま締め込んでいってもダンパーチューブはフリーな状態なので、アレンボルトと一緒に回転します。供回りですね。なので仮締め、とゆうかある程度締めたら一度締めるのをやめます。

フォークを直立させて、上から内部を見て、ずれが無いかを確認します。
アレンボルトを締め込むために、取り外す時と同様に、フォークを仮組みします。
カートリッジエミュレータ、フォークスプリング、ワッシャー、カラーを入れて、トップキャップを閉めます。
プリロードを最強にしてフォークスプリングにテンションを掛けます。

ここまで、ロアーストップとダンパーが中心からずれないように注意しながら作業していきます。

アレンボルトを締めていきますが、純正マニュアルには規定トルク値が載っていません。CLYMERのマニュアルも同様です。フォークの状態を確認しながら、少しずつ締めていきます。最後は感覚ですが、キュッと締めて銅ワッシャーのつぶれる様子を感じながら、グッと締めます。まあ、オイルが漏れなければそれでいいです。 





重要なのはこの段階でフォークがきちんと動くかどうかで、少しでもおかしなところがあればひとつ前に戻ってやり直します。ここをいかに精密に組み立てるのかがフロントフォークの肝で、細心の注意を払って作業に向かう人も多いですね。私はそれ専用の工具も持ち合わせていないので、目と、感覚でいきます。

トップキャップを外してカートリッジエミュレータまでの部品を出します。フォークを上から覗き込み、ダンパーチューブとインナーチューブがアウターチューブのセンターからずれていないか確認します。インナーチューブをスライドさせて、上から下までスムーズに動くか、動きが渋いところが無いかチェックします。インナーチューブを回してはスライドする、を繰り返します。大丈夫なようです。

アッパーブッシングを打ち込みます。インナーチューブの上から挿入します。 








あっ、インナーチューブがなんか黒くなっていますね 。DLCコーティングを施したインナーチューブです。




スペーサーを入れます。




オイルシールプッシャーです。
オイルシール打ち込み用の専用工具ですが、塩ビパイプなどで代用する人が多いですね。


(STRAIGHT/ストレート) フロントフォークオイルシールプッシャー 19-8701




スペーサーに合わせてアジャスターを調整し、打ち込んでいきます。ブッシングがなかなか入っていかないので、最後の方はゴムハンマーで叩き入れました。




次はオイルシールの打ち込みなのですが、シールのリップ部分の保護のため、インナーチューブの口にサランラップをかぶせて、薄くフォークオイルを塗ります。




オイルシールにシリコングリスを、塗るとゆうより指で刷り込んで、インナーチューブに入れていきます。 スルスル入ります。 ドライ、つまり無潤滑で組み付ける人もいますが、私はしっかりと潤滑します。




ガンガンガンガン、ハンマーでコンコンコンコン、打ち込んでいきます。




リテーニングリングがはまる溝が見えるまで打ち続けます。




リテーニングリングを溝に嵌めます。




これでインナーチューブがアウターチューブに固定されました。
インナーチューブをくるくると回しては上下にスライドさせて、動きの確認をします。いいですねー。スムーズに動きます。

フォークオイルは引き続きアッシュの58番です。高性能で長持ち! 




オイルを入れてエア抜きをします。と言っても、アッシュのフォークオイルはそもそもあまり気泡が出ないし出た泡はすぐに消えるので、数回ストロークさせて数分放置を5回くらいしたら終わりです。合間にストロークのテストも行います。動きの渋いところがないか、しつこくチェックします。どの位置でもスムーズにストロークすることを確認し、 最後は少し長めに放置します。

カートリッジエミュレータを投入しますが、底で傾かないように注意が必要です。




油面を160mmに合わせたあと、フォークスプリングを入れて、その上にワッシャーを乗せ、カラーを入れます。






トップキャップを装着する前に、ダストシールを入れます。シリコングリスで潤滑&保護です。





トップキャップを取り付け、手で締め込みます。








これでフォークの組み立ては終わりました。
あとは外に出て、フォークを車体に取り付けて行きます。



フォークブラケットピンチボルトを仮締めし、トップキャップを本締めします。といっても、キュッと軽く締めるくらいです。

下からフォークスプリングの反発力がかかっていてそうそう緩むところではないので強く締める必要はないのですが、左右均等の締め具合になるように注意します。
とゆうのも、トップキャップの上面をフォーク突き出し量計測の基準点にしているので、なるべく誤差を少なくしたい為、です。

フォークの突き出し量を取り外す前の数値に合わせます。フォークブラケットピンチボルトの規定トルク値は、41-47ニュートン (N・m)です。下限付近の43ニュートンで本締めします。

アクスルシャフトです。サビもなく、綺麗です。








ハーレー純正 ホイールベアリンググリースをシャフトに塗りこんでいきます。
ワッシャーやスペーサーにも塗っておきます。こちらは潤滑と言うよりサビ防止目的です。






ハーレー純正ホイールベアリンググリースは量がたっぷり、高品質でお買い得です。


ハーレー ホイールベアリンググリース



ホイールにシャフトを通します。スムーズに入って行きました。

アクスルナットを取り付けて、締めていきます。トルクレンチを使います。
フロントアクスルナットの規定トルク値は、68-75 ニュートンです。下限付近の70ニュートンで締めます。この後普段使いのレンチで軽く増し締めします。深い意味はないのですが、気持ちの問題です。
あと、こうするといちいち手間ですが、トルク感を手の感覚で覚えるのに役立ちます。







ホイールがスムーズに回るかチェックしつつ、フェンダーとブレーキキャリパーを取り付けて、完成です。







作業完了です。

オイルシールやブッシングをそのまま継続して使う事は予定外でしたが、調子よく走れるのなら、無理に交換せずに、使えるものは使おう、と思ったのです。

オイルがまた漏れてきても、気が楽です。なんといっても新品部品一式が手元にあるのですから。違うやり方を模索するのも面白そうです。

でも、こういった事は他人のバイクでは出来ないですよね。自分のバイクだからこそ、出来ることだとと思います。

不具合が起きても自分の責任です。
それが一番です。

現在、オーバーホール後、数日経過していますが、オイル漏れはありません。古いオイルシールもしっかりと仕事をしてくれている様です。
しばらく経過を見ないといけませんが、今の所は、問題なく、どころか過去最高の状態で乗れています。

まあ、フロントフォークに限定すればの話ですが。このあたりについては改めて報告したいと思います。



132,797Km(※142,797Km)




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