プラグギャップの調整 / Spark plug gap adjustment

昨日の記事の続きです。

何を調整するのか?の答えは、スパークプラグのギャップです。







先日、少し前の記事で書きましたが、それまで8,000Km以上使用していたNGKのスタンダードプラグから、NGKのイリジウムプラグ「DCPR7EIX」に交換しました。
車両にプラグを装着する前にプラグのギャップ、要は火花を発生させる中心電極と外側電極のあいだの隙間の調整をしたのですが、この時は「1.00 mm」にしました。

ハーレーのエンジンは2気筒です。Vツインエンジンですね。私のXL1200はひとつの気筒に対してひとつのプラグを使うので、合計で2本のプラグが必要になります。車両に跨った状態で言うと前後の気筒に対して1本ずつ、合わせて2本ですね。
実測したところ、1本が「0.77 mm」で、もう1本が「0.74 mm」でした。
確認のためにNGKに問い合わせをしたところ、DCPR7EIXのプラグギャップ値は「0.80 mm」に設定している、との事でした。
ハーレーの純正マニュアルでは、私の車両、2006年式XL1200のプラグのギャップを「0.97〜1.09 mm」に規定しています。なぜこんなに中途半端な数字なのかと言うと、オリジナルの表示がインチ表示だからで、米国本土の表示では「0.38〜0.43 inch」というざっくりとした数値になっています。ミリに換算すると「9.652 〜1.0922 mm」になるので、「0.97〜1.09 mm」はこの近似値ですね。

ここで、ハーレーの規定値と、プラグメーカーNGKの設定値に差がある事が分かります。
ハーレーは「約1.0〜1.1 mm」、NGKは「約0.8 mm」ですね。約0.2〜0.3 mmの差になります。DCPR7EIXをはじめとするイリジウムプラグでは、通常プラグメーカーは「プラグギャップの調整をしないで下さい」とアナウンスしています。
これはおそらく調整時に工具などがイリジウムの極細電極に当たる事で、電極が破損したり、傷ついたりするのを嫌っての事だと思います。
プラグギャップの調整をせずに箱から出してそのまま装着した場合、不具合が起こる可能性が、2つ考えられます。私の車両を例にすると、以下の2点です。

①車両メーカーの規定値との差による不具合
②各プラグの誤差による不具合

まず①ですが、点火に関する電気系統が正常で調子が良ければ、問題はないと思われます。
しかし、経年劣化や何らかの理由で電気系統に異常があった場合は注意が必要です。イリジウムでも十分な着火が得られず、さらにノーマルよりもギャップが狭まっている事で余計に正常な燃焼が困難になる、といった事が考えられます。
よく「イリジウムプラグにすると調子が悪くなった」とか、「イリジウムはカブリやすい」というのを目にしますが、こういった事が原因なのかも知れません。
この場合イリジウムプラグに問題があるのではなく、他に問題があるのですが、その問題解決をイリジウムプラグに期待しまうと、イリジウムに交換して余計に調子が悪くなる、というパターンに陥ります。
点火系がノーマルでも電気系統が正常で調子が良ければ、プラグメーカー設定値の「0.80 mm」でスタンダードプラグと同等かそれ以上の燃焼が得られるように、NGKはイリジウムプラグを設計しています。

問題なのは②です。プラグの公差、要はプラグ1本1本のバラつきですね。
NGKとしてはプラグのギャップを「0.80 mm」で設定しているので、製造工程のどこかのタイミングでプラグのギャップを「0.80 mm」に揃えているはずですが、工場から出荷されて私たちユーザーの手に届くまでに、プラグのギャップは狂います。実測した結果、2本ともギャップが狭まっていました。おそらく店頭に並ぶプラグのギャップはバラバラです。
物流の過程を考慮すると仕方がない事だと思います。
何が問題かというと、これをそのまま車両に装着した場合、各気筒でプラグのギャップがまちまちになって、それが点火に悪影響を及ぼす、という事なのです。
XL1200の場合、前後の気筒でプラグの電極間の火炎核の状態を比較すると、プラグのギャップが揃っていない場合、片方が強く大きく、もう片方が弱く小さくなります。要は片っぽが弱い分もう片っぽがいつもより余計に頑張って、しんどい思いをしてアンバランスな状態になるのです。
これは過去に経験した事なので、よく分かるのです。なんか調子悪いなぁ、と思いプラグのギャップを確認したところ、前後のプラグギャップが揃っていなくて、きちっと揃えて調整したら驚くほど調子が良くなったのです。この事がきっかけで点火系に注目したというか、ハマった瞬間だったのですが、各気筒の数値を揃える事がどれだけ重要な事か、改めて認識した瞬間でもありました。

というわけで、私はきちっとプラグのギャップを調整します。
私が電話でNGKに問い合わせをした時に応対してくれた担当の方が言っていたのですが、点火系がノーマルの場合、プラグギャップは車両のメーカー規定値の± 0.1 mmくらいなら問題はない、との事でした。この方はイリジウムプラグのギャップ調整をする事に対して、抵抗感を示す事はありませんでした。ギャップを広げると火炎核が大きくなりますが、電極の消耗は激しくなります。お好きにどうぞ、といった感じですね。





V-UP16を取り付けた目的はここにあります。そう、プラグのギャップを広げるのです。
プラグのギャップを広げていくと、電極間の火炎核が大きく、強力になっていきますが、その分高い電圧をプラグが要求します。その要求にV-UP16が、一次電圧を16ボルトまで昇圧して応えるのです。















私はこれでギャップを調整します。
プラグギャップ調整用のワイヤーゲージですね。ゲージ部分は使いませんが、これだと電極に触れることなく調整できるので、イリジウムプラグでも特別気を使う必要はありません。





このようにして外側電極に引っ掛けて広げたり狭めたりします。
写真を撮る為に片手で持っていますが、実際やるときはもちろん両手でやります。分かりますよね?
広げる時も狭める時も、極力外側電極が平行に動くように注意して、工夫しながら作業します。
交換してから1,000Kmくらい走行しているのですが、プラグの絶縁体、白い部分が綺麗ですね。クリーニングはしてません。このようにプラグ自体を綺麗に保つのも、イリジウムプラグの特徴です。







こだわりを持って、きっちり揃えます。隙間計測にはシックネスゲージを使います。
使うのですが・・・

あっ!錆びてるっ!

寸法が変わらないように錆び落としをしなくては・・・。






まず現状。ギャップ「1.00mm」は、普通、とします。
0.1 mmずつギャップを広げていきます。

①「1.10mm」
・全体的に力強くなった感じ
・いい感じ

②「1.20 mm」
・アイドリングが安定「ドドドドドドド・・・」
・発進がスムーズ
・微振動が減って鼓動感アップ
・1.10mmよりさらにいい感じ

③「1.30 mm」
・アイドリングがものすごく安定「ドドドドドドドドドドドド!」
・発進がさらにスムーズ「おっ!」
・さらに鼓動感アップ
・加速もスムーズでひっぱっても頭打ちの抵抗感が軽い
・超いい感じ!






本当は具合が悪くなるまでギャップを広げていくつもりでしたが、これでタイムアップです。まあ、常識の範囲内(?)で収まり、いい結果になったので良かったかな、と思います。
このプラグギャップの調整、基本は点火系を強化してギャップを広く取り、電極間の火炎核を強力にしていく方向なのですが、ひとつの「セッティング」と捉えてもいいかも知れません。点火時期やキャブレターの調整と合わせて、ベストなポイントを探るのも面白そうです。
とりあえずは「1.30 mm」でしばらく乗ってみます。ちょっと、驚くぐらいアイドリングが力強く安定し、発進がめっちゃスムーズになったので、運転するのがとても楽チンになりました。
あとはプラグの耐久性にどれぐらい影響するかですね。6,000Km以上性能が変わらなければいいな〜。
プラグについてはまだまだ書きたいことが他にもあるので、いずれそれらも記事にします。





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