S&S ロッカーカバーとロッカーアーム / S&S Die-Cast Rocker Covers and Standard Forged Rocker Arms

昨日の記事の続きです。
ハーレーダビッドソンスポーツスター2006年式にS&Sのロッカーカバーとロッカーアームを取り付けていきます。




早速取り付けの準備ですが、ボルト類をまとめておきます。
写真に写っているのが前後1セット分なので1気筒でこの半分の数を使います。
①左上 ボルト&ワッシャー ×2
②右上 ツバ付きボルト ×2
③左中 ボルト&ワッシャー ×1
④右中 黄色ボルト ×4
⑤左下 黄色ボルト&ワッシャー ×6
⑥右下 ダウエルピン ×2
これが1気筒分ですね。
黄色くなっているのは、ロックタイトです。ボルトの緩み止め剤ですね。




ガスケット類です。
⑦左上 ボトムガスケット ×1
⑧右上 ロッカーカバーシール ×1
⑨左下 ラバーコーテッドワッシャー ×6
⑩右下 Oリング ×1

⑨の黒いワッシャーは、⑤のワッシャーの下に付きます。




作業開始です。




いきなりですがフロント側は終わっています。リア側はまだ手つかずの純正状態です。比較します。












S&Sの方が背が低くなっているのが分かるでしょうか?純正に比べるとだいぶコンパクトです。




真上から見ると、左右ともにカバーのボルトが見えます。整備性が良さそうです。




純正はこんな感じです。キツキツです。




カバーを外すのにも苦労します。特にリア側はキツイです。




ロッカー部分のボルトを緩める前に、ジャッキアップしてギアを5速に入れ、リアタイヤを回します。この部分について、純正マニュアルでは「取り外すヘッド側の両方のバルブが閉じるまで、クラン クシャフトを回転させる。」と書かれているだけです。これだけではなかなかイメージしにくいですよね。

今回の作業はロッカーカバーとロッカーアームの交換なので、キャブレターとマフラーは取り外していません。よって吸気バルブと排気バルブは両方ともそれぞれのポートから目視することは出来ないのですが、バルブスプリングはこの状態で見えているので、両方のスプリングがフリーな状態、つまりロッカーアームに押されていなくてテンションが掛かっていない状態になるまでリアタイヤを進行方向に回します。




次にプラグホールから棒を入れてピストンが上死点、つまりシリンダーの一番上に来ているか確認します。ピストンが上死点に来ていれば、棒がピストンの頭に当たるはずです。来ていなければ棒はそのままシリンダーの中に入っていくので、手を滑らせて穴の中に棒を落とさないように注意が必要です。私は写真の様に、万が一手を滑らせても穴の中に落ちていかない様に、L字型レンチを使いました。ピストンが上死点に来ていない様であれば、タイヤを再び進行方向に回して、やり直します。

両方のバルブが閉じていて、ピストンが上死点に来ている状態、つまり圧縮上死点に来ているのを確認してから、ロッカー部分のボルトを外していきます。こうする事で、ボルトを緩める際に、シリンダーヘッドやカバー類に与えるストレスを緩和する事が出来ます。
ロッカー部分のボルトを少しずつ緩めていき、ロッカーカバーを取り外します。






純正のロッカーカバーとロッカーアームです。今までありがとう!




ガスケットを慎重に剥がしますが、こうなりました。ガスケットの残骸がシリンダーヘッドにこびりついています。




綺麗にしていきます。




専用工具は・・・




毛羽立ちの少ない布と、爪です。




この爪という物質は、硬さとしなやかさを併せ持ち、対象とする素材、特に金属を傷つけにくいという特長があります。更に、数ある工具の中で最も手に感触が伝わってくるなど、非常に優れた性質を持っています。

・・・まあ、今回の作業ではシリンダーヘッドが車載状態なので、スクレーパーやケミカルを使うのに抵抗があった、というだけの話です。しかし、素材に優しいのは確かなので、時間は掛かりますが、丁寧に作業していきます。

あいまにシリンダーヘッド内に落ちたガスケットのカスをシリコングリスを塗った綿棒で拭い取りながら進めていきます。




パーツクリーナーを吹きかけたメラミンスポンジで汚れを落とします。水は使いません。
メラミンスポンジは便利ですが、あまり強く擦ると素材に傷がつくので注意しながら作業します。




清掃完了です。綺麗になりました。




定規を当てて歪みのチェックをします。100均の定規ですが、まっすぐに線が引けるものです。精密ではないかも知れませんが、大きな歪みはこれで分かります。隙間もなく、OKです。




では、新しいロッカーアームとカバーを組み付けていきます。

まず、⑦のボトムガスケットにシリコングリスを薄く塗ります。接着・密着の役割と、再分解時にガスケットが貼り付かない様にする為です。S&Sの説明書には載っていませんが、このガスケットには裏表の向きがあって、文章で説明しにくいのですが、「水溜りが出来る方が上」で正解です。
シリンダーヘッドに載せて、位置を合わせ、ロッカーハウジングを取り付けます。




④のボルトを締めていくのですが、クリアランスがキツイ・・・。ここを締める専用工具がS&Sから出ているので、ある程度は予測していたのですが、小型のL型レンチでなんとか少しずつボルトを回していきます。こういうのが素人にはキツイですね。工具の選択肢があまり無いので。




ここまで来てようやくラチェットが使えます。




こっちはもっときつくて、ラチェットを使えたのは最後の1周くらいです。④の4本のボルトは、なんとかトルクレンチを使うことが出来ました。
ハウジングにOリングをはめます。




ロッカーアームの組み立てです。RED LINEのアッセンブリールブを使いましたが、稠度(ちょうど)が調度良く、使いやすかったです。シャフト、ロッカーアームの摺動部に塗り込んでいきます。

もし金属に指紋があるとすれば、その指紋の中の奥深くまで擦り込んでいくつもりで、気持ちを込めて塗ります。



 
ロッカーアームを仮組みしたロッカーアームサポートをハウジングに載せていきます。
ここにもOリングをはめます。





②のツバ付きボルト2本はここです。ロッカーアームのストッパーも兼ねています。
もともと黄色いロックタイトが塗られているボルト以外のボルトには、モリブデングリスを塗っておきます。焼付き防止と、ネジをいたわる気持ちです。




①のボルト2本はここです。先ほどの反対側ですね。




③のボルト1本はここですが、見ての通りワッシャーの下が長穴になっていますので、締め付ける順番は最後でいいでしょう。というのも、組み付け手順がS&Sの説明書には詳しく書いてないのです。「ここはどうなん?」というところが、説明されていない事が多いので、自分で考えるしかないんですね。



 
バルブスプリングとハウジングのクリアランスに問題がない事を確認しつつ、各ボルトを規定トルク下限付近で締めて、その後普段使いのレンチで少し増し締めします。
ここまでのボルトの規定トルク値は、③以外は全て18 ft-lb (15-18 ft-lbs)なのですが、私が普段使っているトルクレンチは全てニュートンメーター(N・m)なので、数値をニュートンに変換し、22 N・mで本締めしました。




③のボルトを締めますが、ここだけ規定トルク値が違い、100 in-lbです。11 N・mで締めます。
さあ、もうひと息です。




⑧ロッカーカバーシールにも薄くシリコングリスを塗って、ハウジングの溝に収めます。純正と違い、ピッタリ、カチッと、ストレスなく収まります。
カバーもすんなり装着できました。純正とは大違いですね。




⑤のボルトにワッシャーと、⑨のラバーコーテッドワッシャーを通します。ラバーがエンジン側です。ボルトを締めていきますが、ここのトルク値が説明書に載っていませんでした。まあ、オイルが漏れなくて、ボルトが緩まなければいいので、均等に「キュッ」っと締めておきましょう。

それにしても、ボルトが締めやすい・・・。整備性が格段に向上しましたね。これはいい!



 
作業終了。
あ、⑥のダウエルピン4つは使用しなかったのですが、組み付けに支障はありませんでした。




完成です。



試乗すると、フィーリングも良く、オイルが漏れている様子もないので、ひとまずは成功です。そう、フィーリングがいいんです。
大満足!




133,098Km (※143,098Km)



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