フロントフォークのオーバーホール その2 / Front fork overhaul (2)

昨日の記事の続きです。 
2006年式のXL1200。ダンパーロッド式テレスコピックフロントフォークのオーバーホールです。
パーツの名称は基本的にHarley-Davidson parts catalog を引用しています。また、ボルト等のサイズの表記は2006年式のXL1200に使われているサイズなのでご注意ください。


まずはフォークの突き出し量を確認します。






次にトップキャップを緩めておきます。フォークを車体から取り外して、フォーク単体にすると、インナーチューブとアウターチューブががそれぞれどこにも固定されていない状態になり(インナーチューブとアウターチューブはくっついているが円方向にくるくる回る)、トップキャップを緩める時にインナーチューブを手で力強く固定しなければいけなくなるので、そうならないようにあらかじめフォークが車体に付いている状態で少しだけ緩めておくと、後の作業が楽になります。






ジャッキアップする前にフロントフェンダーとフロントブレーキキャリパーを取り外します。キャリパーに付いているブレーキホースが痛まないように、袋に入れて車体に吊るしておきます。

フロントアクスルナットと、フォークを車体に固定しているフォークブラケットピンチボルトも少し緩めておきます。この時、ピンチボルトを緩めすぎるとフォークがトップキャップの方向に突き抜けて車体が前のめりになり、非常に危険なので注意してください。

ジャッキアップする前に緩める理由は、規定トルクで締められているボルトやナットをジャッキアップしてから緩めるとなると、どうしても不安定な中での作業になってしまい、最悪車体が転倒する恐れもあるので、それを防ぐためです。なので本当に少し緩めるだけで十分です。締め付けられたボルトやナットのストレスを少し抜いて、ジャッキアップ後にスムーズに緩める、とゆうイメージです。 

その後、ジャッキアップをするのですが、ジャッキを車体の下にセットする前にギアをローに入れておきます。ローギアに入れても、車体を揺すると少しだけ前後に動くと思うのですが、これを後ろいっぱいになるようにしておきます。ジャッキをあげるとどうしても後ろに押されるからです。出来るだけ安定してジャッキアップするためのひと工夫です。

ジャッキアップしていきます。ジャッキを上げていくと、少しずつフォークが伸びていき、タイヤが地面から離れていきます。ジャッキアップの目安は、タイヤが地面から離れるか離れないかの所です。手で回せるけど地面に擦っているくらいです。






この状態で、フロントアクスルナットを外して、シャフトを抜きます。スルスルとスムーズに抜けるはずです。

4か所あるフォークブラケットピンチボルトを少しずつ緩めていきます。一気に緩めるとフォークがスコッと抜けるので、フォークを支えながらゆっくりとボルトを緩め、車体からフォークを外します。






これでフォークが単体になりました。あとは部屋で温まりながらゆっくりと作業をしていきます。

トップキャップを外します。プリロード調整ができるトップキャップなので、プリロードを最弱にします。あらかじめ緩めておいたので、手で回して簡単に外せます。






SUNDANCE製です。分解します。









プリロード調整ボルトのOリングがささくれています。

(※追記 サンダンスさんに問い合わせをしたところ、「分解しないで下さい」との事でした。もともとユーザーが分解する事を想定していなかったようで、それを知らずに分解するとOリングはこのようにささくれてしまいます。もし何らかの事情でOリングを交換する際にも、組み付けにあたっては0リングに傷がつかないように細心の注意が必要、との事です。 2016.05.19)


フォークスプリングを出しますが、フロントフォークが純正仕様ではなく、RACETEC社のフォークスプリングと同社製カートリッジエミュレータが入っていますので、スプリングの前にスプリング長調整用のカラーとワッシャーが出てきます。
純正の状態では、このカラーとワッシャーはありません。

続いてスプリングを取り出します。カートリッジエミュレータはスプリングの下にあって、普段カートリッジエミュレータを触る時は3爪のマジックハンドで取り出すのですが、今回はフォークオイルを新しいオイルに入れ替えるので、フォークを逆さまにしてフォークオイルと一緒に出します。

左下に見えるのがカートリッジエミュレータです。ダンピングを調整するパーツなのですが、詳しい事はまた後日改めて記事にしたいと思います。 






分解します。





各部点検&清掃。





カートリッジエミュレータのバネの全長を計ります。28.60mmですね。











まず、プリロードを調整するボルトを締めていきますが、ワッシャーがバネに当たるポイントで止めます。 次に、バネを軸方向に動かして遊びがない状態でなおかつバネが縮まない様にボルトを開け閉めして調整します。 これでカートリッジエミュレータにセットされたバネの状態は、先ほどの数値、28.60mmに近似になるはずです。 ここを基準にしてボルトを2回転締めます。27.07mmになりました。 




小数点以下第2位を消すと27.00mmになりなす。このボルトは1回転が0.8mmなので、2回転では1.6mmになります。つまり全長28.60mmから2回転分の1.6mm縮めた事になるので、28.60mm − 1.6mm = 27.00mmでビンゴ!
左右のカートリッジエミュレータを27.00mmで揃えます。 




せっかくなのでフォークスプリングの全長も測りましょう。377mmです。左右揃っていました。





さてここで第1の関門、アレンボルトの登場です。




まず、使用する工具がソケットの場合、スタンダードな長さではボルトに届きません。ロングタイプが必要です。六角6mmのロングです。私は先端の長さが120mmの物を使いました。55mm以上あれば大丈夫です。


6mm ロングヘキサゴンソケット

問題なのは、ボルトと相手先のダンパーチューブが供回りして、アレンボルトが外せないケースがあるとの事で、ネットで検索するとよく目にします。 プロはインパクトを使う、万力で固定する、お腹で押さえつけながらボルトを緩める、二人でやる、とかですね。
実際どうなのかは、やってみないとわからなので、とにかくやってみます。

オイルを抜いたフォークにカートリッジエミュレータ、スプリング、ワッシャー、カラーを入れます。トップキャップのプリロードを最弱にしてからフォークに取り付けます。
要は一度元に戻すのです。

トップキャップを取り付けたら、プリロードを最強にします。これでスプリングに強い与圧がかかります。フォーク内部ではダンパーチューブがスプリングに上から押さえつけられている事になります。

この時にダンパーチューブを押さえつけるスプリングの力が弱いと、アレンボルトを緩める時にダンパーチューブがアレンボルトと一緒に回転します。 「供回り」とは、この状態のことを指しているのですね。

左手でアウターチューブを持って横向きで床に押さえつけ、右手で持った大きめのラチェットレンチでアレンボルト回します。すると・・・

拍子抜けするほどあっさりと緩みました。
いや、こっからか?こっから供回りするんか?と疑心暗鬼になりながらボルトを緩め続けると・・・





取れたっ!
無事、アレンボルトの取り外しに成功しました。






第一関門突破です!



『フロントフォークのオーバーホール その3 / Front fork overhaul (3)』
に続く




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2 件のコメント :

  1. わかりやすいブログでフロントフォークのオーバーホールの参考にさせて貰っています。
    お聞きしたいのですが、アレンボルトの六角のサイズは9mmになりますか?
    僕もオーバーホールしようと思い工具を揃えているところです。

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    1. TAKAさんこんばんは、コメントありがとうございます。
      アレンボルトの六角のサイズは6mmで、先端の長さが55mm以上あれば大丈夫です(2006年式XLの場合)。頻繁に使う工具ではないので、僕は安物で済ませました。
      フロントフォークのオーバーホール、うまくいくといいですね(^ ^)
      僕もこの記事を書いてから結構な距離をハードに走っているので、もう一度オーバーホールしようと考えているところです。

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