『ロシア上陸』 ウラジオストク / Владивосток

2008年ロシアの旅 /  2008 RUSSIA touring

※このシリーズは、2008年の旅行記になります。渡航情報や現地の様子などは2008年当時のもので、現在では状況が大きく異なっている可能性があります。また、記憶が曖昧な部分もあり、間違った情報が記載されている事も考えられます。何かの参考にされる方は注意してください。
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5月25日 日曜日

船が港に着いた。ウラジオストク、ここはもうロシアだ。
様子を見ようと甲板に出るが、辺り一面濃くて深い霧に覆われていて、街の全体像が見えない。船からは港が少し見えるくらいだが、明らかに日本ではないのが分かる。これがロシア、これがウラジオストク。霧の具合も合わさって、異様な雰囲気を醸し出している。


船を降りる準備をするが、バイクに積載していた荷物を手荷物として持って入ったので、1人で3人分くらいの荷物量だ。藤本さんとニシさんも合わせて3人で9人分にもなる量の荷物を、3人でピストンしながら運ぶ。船の階段を降りて、入国審査の場所までが、また遠い。途中バックパッカーのスガさんが手伝ってくれる。ありがたい。

入国審査は必要書類を提出しただけで、あっけなく通過できた。さあ、いよいよ正式にロシアに入国だ。
まずは、ある人物を捜さなくてはならない。大量の荷物を抱え、周囲を見渡しながら歩いていると、ターミナルに並ぶ10人ほどのロシア人の中に、「WELCOME Mr.YOSHIDA」と書かれたボードを持った男がいた。
「シャローノフ?はじめまして」と声を掛けると、笑顔なく頷く。
「はじめましてシャローノフです」
右手を差し出し、握手する。
シャローノフは、私がロシアのビザを取得した際にお世話になった旅行会社の方が手配してくれた通訳で、バイクの通関の手続きが出来る重要な存在だ。通称は「シャロちゃん」で、旅行会社の方はそう言っていた。見た目は映画に出てくるロシアのスパイだ。

このバイクの一時輸入の通関手続きというのが難関で、早くて3日から1週間、長ければひと月以上掛かる、という情報があった。私はなるべく早くバイクに乗りたかったので、通訳というよりもバイクの通関手続きの為に依頼していたのだ。手続きには、ロシア語で、難解且つ大量の書類を作成する必要がある。
「吉田さんすごいなあ」
藤本さんがニコニコしている。

挨拶もほどほどに、シャロちゃんに先導してもらってタクシーに乗り込む。シャローノフ、藤本さん、ニシさん、同じホテルを予約していたスガさんと私。それに大量の荷物。タクシーの中は人と荷物でギュウギュウだ。初めてのロシアにテンションが上がる日本人4人とロシア人スパイ(通訳)で車内はワイワイガヤガヤ。霧が少し晴れてきた。















噂に聞いていた通りのボコボコのアスファルト。ここは世界きっての大国、ロシア。あらゆる面が日本とは違う。
ルーシ号に残されたXL1200の事が気掛かりだ。果たして無事に再会出来るだろうか。

考え事をしているあいだに、タクシーが止まった。ホテルプリモーリエに到着していた。
私とスガさんとシャローノフがタクシーを降りる。藤本さんとニシさんは別のホテルを予約していたのでそのままタクシーでホテルまで移動するが、いったんタクシー代を4人で割る。運転手に手持ちがドルしかない事を告げ、ドルで支払う。藤本さんニシさんとはしばしのお別れだ。またすぐホテルに遊びに行くよ。
部屋の予約も無事取れていて、キーを預かり、ひと安心。





ロシアの旅は、少し事情がややこしく、外国人が自由に旅行出来ない仕組みになっている。事前に旅行行程の確認書がいるのだ。バウチャーと言って、入出国日やいつどこに滞在するか、どういったルートで移動するかといった情報と、宿泊するホテルや交通機関の支払証明などが記載された、ロシア連邦外務省公認の旅行代理店が発行する書類が必要で、このバウチャーがないとロシアのビザを所得することが出来ない。
つまり旅行前に全日程のホテルを予約して、支払いを済ませていなければならないのだ。これでは自由旅行どころかキャンプも出来ない・・・。
そこで我々ライダーは、通常の観光ビザではなく、業務ビザ、いわゆるビジネスビザを取得する事で、自由旅行を可能にしている。これなら、おそらく大都市のみホテルを利用すればいい。予約も事前支払いもいらない。ロシア旅行の裏ワザだ。

ルーシ号での藤本さんの言葉が印象的だった。
「ロシア旅行は、我々ライダーが1番先をいってるのかもしれないですねえ」
私も同感で、バックパッカーのスガさんは、やはり各地のホテルを事前に予約していて、日程をずらせない、と言っていた。遅れる事も早く通過することも出来ないのだ。





部屋に荷物を置き、ロビーで待つシャローノフとバイク通関の打ち合わせをする。今日は日曜日なので、通関の手続きは明日以降になる。早くバイクに乗りたいと私はせかすが、シャローノフは早くても3日掛かる、と言う。水曜日以降か・・・。
通関に必要な書類をシャローノフに預けると、明日朝9時に来ると言って、シャローノフは帰って行った。この間も彼が笑顔を見せることはなかった。

さあ、これでようやく自由時間の始まりだ。








街を散歩する。
車は右側通行だ。バイクを運転するまでに、見慣れておこう。





新しいビルの建設中。今まさに開発されているのがよくわかるが、その前に道をもっとなんとかしろよ、と思う。






これがシベリア鉄道。ウラジオストク駅・・・かな?
スガさんと超元気なおばちゃんはここから世界への旅に出る。






港には独特の空気が流れている。
XL1200と共に、無事にこの場所に戻ってくることを祈る。





ひとり歩きも飽きてきた。手持ちのドルを換金所でルーブルに換え、本屋でロシアの全土地図を買い、ホテルに戻り、スガさんの部屋に遊びに行く。くつろいでいたところ申し訳なかったが、スガさんの部屋でしばし談笑する。スガさんはひと足先に明日出発だ。この自由人はこれからどんな旅をするのだろうか。

スガさんの部屋を出てから藤本さんに電話すると、ホテルが案外近いことが分かり、歩いて藤本さんとニシさんのいるホテルへ向かう。






2人と合流し、再び街を散策する。
霧が晴れて遠くまで見通せるようになると、街の全貌が見えてきた。想像していたよりもカラフルで、綺麗な街だ。
海外は、10代の頃にアメリカのロサンゼルスに遊びにいって以来で、これが2回目になる。
目に入るもの全てが新鮮で、異国の空気というのもなかなか心地いい。

























歩いていて気が付いたが、日本よりも日差しが強く、暑い、というよりも、熱い。日本より太陽が少し近い気がする。
 




ひと通り近場をぐるりと見て回り、藤本さんの部屋で情報交換してから、2人と別れる。ホテルを出ると、もう外は真っ暗だ。時間を忘れて夢中になっていた。
夜は昼間とはうって変わって、肌寒い。闇が深く、怖いほどの静けさだ。
酒場の辺りはぼんやり明るく、危険な空気を伴いながら、独特の賑わいを見せている。
存在しない暴漢と、至る所に存在する穴ぼこに襲われないように用心しながらひとり、夜のロシアを満喫する。

少し雨が降ってきた。寒さで神経が冴えてくる。
一気に実感が湧く、旅の初日。
ここが旅の出発地点、ロシアの極東ウラジオストクだ。





次は>『最後の晩餐』 ウラジオストク その2 / Владивосток (2)


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