フロントフォークのオーバーホール その後 / Front fork overhaul (5)


 

フロントフォークのオーバーホールをしてから、現在3週間経っています。
左側のフォークからうっすらオイルが漏れているのは分かっていたのですが、頻繁に、ここ数ヶ月は走行ごとに、漏れたオイルを拭き取り清掃しつつ、様子を見ながら1年近く走行していました。
もちろんそのままで治るはずはなく、今年に入って症状が悪化し、それまではうっすらインナーフォークに漏れたオイルの輪っかができる、程度だったのが、オイルシール部分からオイルが溢れ出てくるほどになったのです。
ここまで来てようやく、これは早急に修理しなくてはならないと思うに至り、左右のフロントフォークのオーバーホールをする事にしたのです。



当初は、オイルシールを含めた消耗品を全て交換する予定だったのですが、フォークを分解し、点検してみると、どこにも傷や酷く磨耗している部分がなかったのです。
計測器などは持ち合わせていないので精密に数値を測る事はもちろん出来ないのですが、目視や手触りで入念にチェックした限り、シール、ブッシュなどの消耗品やフォーク自体に異常は見当たりませんでした。分かりやすい傷や磨耗や変形を期待していたのですが、それが無かったんです。

この時点で私は一度、作業の方向性を見失いました。オイル漏れの原因が掴めなかったんですね。いくつか考えられる事はあるのですが、それはいったん置いておき、目の前の作業に戻ります。気を取り直して、当初の計画を変更し、作業を進める事にしました。
変更点は、消耗品をそのまま継続使用する事です。
具体的にはフォークの上から順に、ダストカバー、リテイニングリング、オイルシール、スペーサー、アッパーブッシング、ロアブッシング、そして一番下のアレンボルトの銅ワッシャーです。通常、フロントフォークのオーバーホールと言えばこの7点を新品に交換すると思うのですが、私はこれプラス、フォークドレンボルト、ドレンボルトワッシャー、そしてアレンボルトを交換するつもりで、準備していました。

今回は、これら全てを継続使用しました。つまり交換しなかったのです。これではオーバーホールではなく、ただ単に分解して清掃して組み直しただけ?
もちろんフォークオイルは新しいものを使いました。あと、インナーチューブも換えています。先日の記事に書いた中古ベースでDLCコーティングされたインナーチューブです。
これはフォーク分解前の段階で、オイル漏れの原因としてインナーチューブに傷か磨耗、あるいは変形がある事を疑っていたので、念のため用意しておいたものです。



さて、ここからは実際に作業して感じた事などを振り返りながら書いていきたいと思います。
先に書いておきますが、バイクいじりに関して私は素人です。また、手持ちの工具もごくごくスタンダードなものだけです。ハーレーなので国産のバイクよりも多く必要ですが、一般的なインチ工具、ミリ工具、あとはトルクスですね。ソケットをセットで購入したので、外装などひと通りいじれますが、必要最低限の工具しか持っていません。
フロントフォークのオーバーホールを自分でするのは、今回が初めてです。

まず、フォークの分解ですが、特殊な工具は使いませんでした。事前に下調べをして、今回の作業には必要ないと考えてフォークの分解に臨んだのですが、正解でした。若干の力技が必要でしたが、成人男性なら問題ないと思います。
もちろん、分解にあたっても慎重な作業が必要です。といっても、出来る限り各部にストレスがないように、傷がつかないように、おかしなところがないか手応えや目視で確認しながら分解していく、くらいの事です。
ネットで見ると油圧プレスなどの大掛かりな装置を使っていたり、2人で作業していたりしますが、ひとりの手で大丈夫でした。

しかし、ひとつ注意点があります。私はトップキャップをプリロード調整が出来るものに換えているのです。外から工具を使ってトップキャップから突き出ているボルトを回すことで、フォークの中にあるフォークスプリングを伸び縮みさせる事が出来るものですね。
これが純正の様にトップキャップがただの蓋で、フォークスプリングがへたっていたり、そもそものスプリングレートが低かったりすると、つまりフォークスプリングの反発力が弱い場合には、これによってアレンボルトが取れない、という事も考えられます。
詳しくは「フロントフォークのオーバーホール その2 / Front fork overhaul (2)」に書いていますが、ダンパーチューブにかかるフォークスプリングのテンションが低いと、ダンパーチューブがしっかりと抑え込まれずに、アレンボルトと供回りするのです。
私の場合はトップキャップのプリロード調整ボルトを最強、つまりボルトを締めきって最もボルトを押し込んだ状態、フォークスプリングに掛かる与圧を最大にした状態でアレンボルトを回したので、難なく分解することが出来ました。
純正仕様でトップキャップにプリロード調整機能が付いていなくて、さらにフォークスプリングのバネの力が弱かったとしたら、アレンボルトの取り外しに苦労するかもしれません。
しかし、こういった場合でも工夫次第で解決できると思います。要はダンパーチューブが動かないように押さえつけながらアレンボルトを緩めていけばいいんです。
ハーレーのダンパーチューブは頭が丸い空洞というかただの筒なので工具は掛かりませんが、フォークスプリングとトップキャップの間にワッシャーか何かを噛ませて一時的にスプリングを縮めてテンションを掛けて、ダンパーを押さえつける、などで対応できると思います。
あっ、アレンボルトの取り外しには6mmのロングヘックスが必要です。六角6mmのロングです。私の車両では工具先端の長さが55mm以上あれば大丈夫でした。
手持ちの工具には無かったので、近所の工具屋アストロプロダクツで購入しました。
全ての部品が分解出来ました。










次に点検、清掃ですが、バラした直後に点検し、清掃して、その後再び点検します。
傷や変形などの異常が無いかの確認と、磨耗具合のチェックですね。
オイルシールは古くなってへたったものの方がフリクションが少なくて具合がいい、という人もいます。私も同感です。オイルが漏れなければ新しいものに交換する必要はないと思います。
まあ、ショップでは考えられない事かも知れませんが、自分が乗るバイクなので、不具合があれば自分の責任です。これでオイルが漏れてきたら、その時にオイルシールを換えればいいのです。
ブッシュも新品と比べると少しコーティングが薄くなっていましたが、大きな傷もなく、まだまだ使えると判断しました。

私は部品の清掃にパーツクリーナーを使います。特別なものではなく、近所のホームセンターコーナンに売っているものです。
パーツの清掃に灯油など、いわゆる洗い油を使う人もいますが、匂いがきついのと、廃油の処理が面倒な事もあり、私はあまり使いません。
パーツクリーナーを使う時に注意するのは、ゴム類への悪影響ですね。あまり大量に吹きかけてそのままにしておくと、ゴムがダメージを受けて劣化し、硬くなってひび割れてきます。清掃後ゴム類にシリコングリスなどを塗って保護するのもひとつの手ですが、そもそもゴム類にはパーツクリーナーを使わない方がいいでしょう。
ゴム類の清掃に、私が好んで使うのがこちらです。



















CCI METAL RUBBER MR20
メタルラバーです。
ブレーキキャリパーのメンテナンス時に使う定番のケミカルですね。
「本品は、ブレーキ・クラッチシリンダの組付液として、鉄・アルミニウムを含む各種金属の防錆および潤滑に優れた効果を発揮します。ゴムおよびプラスチック部品を侵さず、ブレーキ液に溶解します。」
と書かれています。防錆と潤滑ですね。それに加えて凄まじい洗浄力も併せ持っています。
この強力な洗浄力を利用して、ゴム類を綺麗にするのです。これを使えば頑固な錆も苦労なく、面白いほど綺麗さっぱり落とせます。
ただブレーキ液以外のオイルと混合した場合、変質する恐れがあるので、メタルラバーで清掃後は入念に拭き取ります。その後シリコングリスを塗ることで、ゴム類を紫外線等から保護すると同時に、潤滑性を高めます。初期潤滑にもうってつけですね。

私はフォークを組み付ける際、全てのゴム類と摺動部にシリコングリスを塗布しました。ドライ、すなわち無潤滑で組み付ける方もおられる様なのですが、私は潤滑します。
また、潤滑するにしても、人それぞれ様々なグリスを使用している様です。こだわっている方は数種類のグリスを独自に調合したりもしています。
私はこれ1本です。

























これも定番、信越シリコーングリースです。
バイクのメンテナンスで頻繁に使います。1本あればかなり重宝します。

ひとつだけ専用工具を買いました。アッパーブッシングとオイルシールを打ち込むフロントフォークオイルシールプッシャーです。塩ビパイプで代用する方が多いのですが、私は工具屋ストレートで購入しました。分解時には必要ないのですが、組み立て時には必要です。
これは買ってよかったです。塩ビパイプでも出来たとは思いますが、この作業の数週間前に、別の作業で専用工具無しでかなり苦労したので、専用工具のありがたみが身に沁みます。あれば確実に作業が出来ます。高いものではないので購入をお勧めします。

最後に、オイル漏れの原因ですが、はっきり言って分かりません。
フォーク分解前と分解後で、換えたのはインナーチューブとフォークオイルだけです。
このことから怪しいのはインナーチューブですが、傷や磨耗はありませんでした。変形や曲がりもありません。厳密に言えば磨耗してるし、曲がっているのでしょうが、目視と手触りと定規を当ててみる範囲では異常無しです。
あと考えられるのは、大きなゴミを噛み込んだ事、くらいです。原因はこれではないかと踏んでいます。
私はメンテナンスの一環として、定期的にダストシールをマイナスドライバーでこじって浮かせ、オイルシール部分を清掃して潤滑しています。なるべく潤滑を切らさないようにもしています。
これも一長一短があるな、と思ったのは、バイクの周囲の環境によっては、ホコリや粉塵などのダストが潤滑剤にとらわれて、余計汚れる、という事です。走行ごとに清掃するならともかく、たまにしか掃除しないのなら、ドライの状態の方がいいのかも知れません。
潤滑性は落ちるが、汚れはマシ、という状態ですね。
今後私は、もっとメンテナンスの頻度を上げて、様子を見ながら対応していこうと思います。もちろん潤滑を絶やさずに・・・。

オイル漏れは完全に治りました。修復完了です。
また漏れてきたら、報告します。





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2 件のコメント :

  1. TRAKTEKのスプリング、良いですね。
    私もフロムSUNDANCE、装着しております。


    以前よりずっとこちらのブログを拝見しておりました。が、長らくそちらにいらっしゃるようので ひょっとしてakioさま、ロシアに移住なさってしまったのかと、、

    akioさまの豊かな表現と明快な文章、そして何より人に対する姿勢に惹かれつつ、その感性と考え方に同調するものがあり、いつも興味深く拝読させて頂いてます。


    XL1200での物語、羨ましい限りでごさいます。どうぞ良き出逢いを、そしてお二人とも道中お気を付け遊ばせ。

    失礼致しました。

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  2. ベチケンさん
    TRAKTEK のスプリングは本当に良いですね、素晴らしいスプリングだと思います。改めて記事にしたいと思いますが、SUNDANCE のサポートがまた素晴らしいんです!

    ロシアに移住・・・ではないですね 笑。やはり住むのは日本がいいです。ただロシアはとても面白く、大好きです。

    以前からこのブログを見て頂いていたとのこと、そしてありがたいお言葉を頂き、恐縮しますが、とても嬉しく思います。

    気を付けて旅を続けます、ありがとうございます!

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