『Москва 1800』ミアース / Миасс

2008年ロシアの旅 / 2008 RUSSIA touring 

※このシリーズは、2008年の旅行記になります。渡航情報や現地の様子などは2008年当時のもので、現在では状況が大きく異なっている可能性があります。また、記憶が曖昧な部分もあり、間違った情報が記載されている事も考えられます。何かの参考にされる方は注意してください。
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6月14日 土曜日

目覚めてテントをたたみ出発の準備。荷物はまだ積載しない。3メートルほどの高低差のある急斜面を登らなくてはならないのだ。
ローギアで斜面を登り慎重に加速するが、タイヤが空転してバイクが前に進まず、ずるずると斜面を滑り落ちていく。ここの斜面は草ボーボーで駆け上がるのが難しい。アリーの窪地の方が傾斜はきつかったが、向こうの斜面は草がなく、乾いた土だった。
何度かトライするが斜面を登りきるのは難しく、ズリズリと滑り落とされる。ギアを変えたりアクセルの開け方を工夫するが、どうしても斜面の中ほどでグリップを失い、前に進む事が出来ない。ブレーキを掛けても後ろに滑っていくのだ。どうやっても斜面を登りきれない・・・。



10回以上斜面との格闘を続けていると、昨日の晩ここに誘導してくれたセキュリティーがやってきた。坂の上から左のほうを指差している。彼の指差す方はジャングルのような草むらだ、あっちに行けというのか。
慎重にジャングルを進むとなだらかな傾斜になっていて、そのまま進んで苦もなく坂の上に出る事が出来た。
セキュリティーの男と目が合いお互い大爆笑。坂の下に残した荷物をXL1200に積載し、モスクワに向けて走り出す。





放牧!







 




順調に進むが、雨が降ってきた。と言っても1日中走ればたいがい雨には当たる。毎日の事なのでほぼカッパを着っぱなしにしている。しかし、この雨は・・・強烈!
突然の大雨、そして雷が近い。視界は数メートルで、まるで目の前に雷が落ちているような凄まじさだ。少し先に脇道が見える、とりあえずあそこで休憩だ。

脇道に入ると広場があるが、雨で広場が大きな池になっている。先客の車が一台、池の側にいる。私もXL1200を停車し、嵐が過ぎ去るのを待つ。





数分で雨は上がり、さっきまでのが嘘だったかのような好天。
再び走り出す。

意気揚々と走行を続けるが、何かの違反で警察に捕まる。停止命令を受けパトカーの中へ・・・。

また賄賂の交渉か、と心の準備をしたが、パトカーの中で警官はパンとジュースをご馳走してくれ、ノートに絵を描いて追い越し違反の標識の説明をしてくれた。金を要求してくる様子はない。警官はあたりに5~6人いるが、この警官が年長でチームのボスのようだ。金はいらないと言う。
私は地図を広げてチュメニ Тюмень への道順を聞くが、警官は「チュメニ ニェット Тюмень Нет(チュメニは違う)」と言って別のルートを教えてくれた。
モスクワへの近道だ、地図には載っていないルート。親切な警官もいるものだ。
親切な警官に別れを告げ、前進を続ける。





しばらくひた走り、もう空は真っ暗になっている。今日の夜はどうするか、テントで寝るか、バイクの上で寝るか・・・。
考えながら走っていると、突然、思いもよらぬものが目に飛び込んできた。
「Москва 1800」

モスクワ!道順を示す標識に、ついに「Москва」の文字が見えたのだ!
その瞬間思わず感動で体が震え、自然と涙がこぼれた。延々と続く長くて過酷な道のりだったが確実に前に進んでいたのだ。

喜び、恐怖、安堵、辛さ、切なさ、土埃、興奮、疾風、感謝、身体中の痛み・・・。涙の理由はひとつではなく、ありとあらゆる感情と物理的なものが入り混じっている。そう、単純に土埃が目に入って流れた涙でもある。毎日、ずっと涙目で走っていた。

モスクワまであと1,800Km。ところどころ身舗装路だが、道は確実に良くなってきている。何もトラブルがなく順調に行けばおそらくあと二日、明後日には着くだろう。
それにしてもあと1,800Kmって・・・。日本では考えられないな。ダート込みの1,800Kmだ、まだまだ先は長い。

ウファ Уфа 手前のガソリンスタンドで給油し、カフェのセキュリティーにテントを張れる場所を聞く。ここで寝ていいぞ、の言葉を期待するが、期待通り「ここでテント張れ」と言ってくれた。平らな場所に誘導され、テントを張る。

「Москва」の文字を見てから興奮が収まらず、頭がシュワシュワしている。
モスクワまであと1,800Km。





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